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岩湧山の 虫こぶ
更新)10.05.10

虫こぶとは
虫こぶとは、昆虫類やダニ類の寄生により、植物細胞が異常生長・分化して、奇形化したものです。虫えい(えいは瘤の意で、やまいだれの中に嬰と書く)とも言います。英語でInsect Galls(虫が作った虫こぶ、細菌に感染して出来た菌こぶ又は菌えいをMite Galls)と書きます。
寄生する虫は、1,423種もあり、ハエ目タマバエ科Gall Flyが44%と半数近く、ハチ目タマバチ科Gall Wasp、ダニ目フシダニ科、カメムシ目アブラムシ科なども多いです。
寄生される植物は、569種もあり、複数の虫で寄生されることも多く、ブナで26種、ヨモギで13種、イヌブナ、エゴノキで8種も寄生されています。
虫こぶのできる場所は、芽や茎、葉、蕾、花、実、根など、様々な部位につくられます。
虫こぶの名付け方は、植物の名前+つくられる場所+虫こぶの形状を表す言葉+「フシ」(=附子又は付子五倍子「こぶ」の意)です。
虫こぶの利害は、基本的に、発育を妨げ植物にとっては害するものですが、枯らしてしまう程のものでもありません。人にとっては、果樹などで被害を出すものもありますが、中には薬や染料として利用されるものもあります。

岩湧山で見かけた虫こぶ
興味を持ったのがここ2、3年です。その間に撮ったもの(37種)を紹介します。名前が確定していないのもあります。なお、分からないものについては「これ何だろう?の広場」を利用しています。
虫こぶ
寄生する虫
寄生する場所
ハエ目
ハチ目
ダニ目
カメムシ目
アカシデハミャクフクレフシ
アキチョウジツボミカラフクレフシ?
アキチョウジツボミフクレフシ
イタドリツボミフクレフシ?
イヌシデメフクレフシ
イヌツゲメタマフシ
イヌブナハボタンフシ
イノコヅチクキマルズイフシ
ウツギメタマフシ
エゴノキハウラタマフシ?
エゴノキメフクレフシ
エゴノネコアシ
オトコエシミフクレフシ
カゴノキハイボフシ
カマツカハミャクコブフシ
クリメコブズイフシ
ケヤキハフクロフシ
シキミハコブフシ
シラヤマギクカワリメフシ
ソヨゴメタマフシ
タブノキハウラウスフシ
タンナサワフタギハフクレフシ
テイカカズラメサキフクレフシ
ツクバネウツギメフクレフシ
ツツジミマルフシ
ツルニガクサツボミフクレフシ
ナラメイガフシ
ニガクサツボミフクレフシ
ヌルデミミフシ
バラハタマフシ
ヒヨドリバナハナフクレフシ
ブナハウラコメツブフシ
マタタビミフクレフシ
マルバハギハトジタマゴフシ
ヨモギクキワタフシ
ヨモギハシロケタマフシ
リョウハブタマフシ

アカシデハミャクフクレフシ(赤四手・葉脈・膨れ・附子)
アカシデ(カバノキ科)の葉の葉脈に、タマバエの一種の幼虫が寄生して、虫こぶが出来ます。

葉裏の葉脈上にできます。こんなに綺麗なのは珍しいそうです(5月上旬)

(仮称)アキチョウジガクフクレフシ(秋丁字・萼・膨れ・附子?)
アキチョウジ(シソ科)の蕾に、トウバナコブアブラムシの幼虫が寄生して、萼は膨れて虫こぶが出来ます。中は空洞です。他の季節には、トウバナに寄生しているようです。未確認の虫えいのため、名は仮称です。

正常なつぼみです。(9月下旬)

萼が巨大化します。(10月上旬)

中は空洞で、トウバナコブアブラムシのさなぎ、成虫もいました。(10月上旬)

アキチョウジツボミフクレフシ(秋丁字・蕾・膨れ・附子)
アキチョウジ(シソ科)の蕾に、タマバエ(一種)の幼虫が寄生して、虫こぶが出来ます。中は空洞です。

つぼみが膨れます。(9月下旬)

蕾のなかに白い幼虫が数匹います。(9月下旬)

白い幼虫です。(9月下旬)

(仮称)イタドリツボミフクレフシ(虎杖・蕾・膨れ・附子)
イタドリ(タデ科)の蕾に、タマバエの一種が寄生して、虫こぶが出来ます。

雄花にできていました。(10月上旬)

1虫室1幼虫のようです。(10月上旬)

イヌシデメフクレフシ(犬四手・芽・膨れ・附子)
イヌシデ(ブナ科)の頂芽に、ダニの一種が寄生して、虫こぶが出来ます。

頂芽が膨れています。(12月上旬)

真ん中を割ったが見当たらず、よく見ると上の方で、小さい肌色のものが見え、ダニかも知れない。(12月上旬)

イヌツゲメタマフシ(犬黄楊・芽・玉・附子)
イヌツゲ(モチノキ科)の蕾に、イヌツゲタマバエの幼虫が寄生して、虫こぶが出来ます。

イヌツゲの正常な蕾です。(12月下旬)

枝先の芽が膨れます。(4月中旬)

幼虫が数匹います。(2月中旬)

イヌブナハボタンフシ(犬山毛欅・葉・牡丹・附子)
イヌブナ(ブナ科)の葉に、イヌブナタマバエの幼虫が寄生して、虫こぶが出来ます。

葉の表面の側脈付近にできます。(11月下旬)

葉から剥がすとき、裏側の中心部だけが葉に食い込んでいました。(11月下旬)

中心部に空間に幼虫が1匹いました。(11月下旬)

イノコヅチクキマルズイフシ(猪子槌・茎・丸髄・附子)
イノコヅチ(ヒユ科)の節に、イノコヅチウロコタマバエの幼虫が寄生して、虫こぶが出来ます。

ヒカゲイノコヅチの正常な節です。(9月中旬)

多くのヒカゲイノコヅチに付いています。(8月中旬)

中に幼虫が数匹見られます。(8月中旬)

ウツギメタマフシ(空木・芽・玉・附子)
ヤブウツギ(スイカズラ科)の芽に、ウツギタマバエの幼虫が寄生して、虫こぶが出来ます。

ヤブウツギの葉に出来る球形の虫こぶ、基部や先に萎縮した葉が付く

中には1つの虫室があり、黄色の幼虫が棲む

タマバエ科のウツギタマバエの幼虫、右は蛹一歩手前か?

エゴノキハウラタマフシ?(えごの木・葉裏・玉・附子?)
エゴノキ(エゴノキ科)の葉裏に、エゴノキタマバエの幼虫が寄生して、虫こぶが出来ます。

エゴノキには8種の虫こぶが出来るそうです。(6月上旬)

葉裏に出来ます。エゴノキハツボフシでないかも知れません。(6月上旬)

エゴノキメフクレフシ(えごの木・芽・膨れ・附子)
エゴノキ(エゴノキ科)の腋芽に、エゴノキタマバエの幼虫が寄生して、虫こぶが出来ます。

エゴノキには8種の虫こぶが出来るそうです。(6月上旬)

芽にできます。(6月上旬)

エゴノネコアシ(えごの・猫足)
エゴノキ(エゴノキ科)の枝先に、エゴノネコアシアブラムシが寄生して、虫こぶが出来ます。

ネコの足に似ていることから、名付けられました。(7月下旬)

エゴノネコアシアブラムシの幼虫、成虫がいました。(7月下旬)

オトコエシミフクレフシ(男郎花・実・膨れ・附子)
オトコエシ(オミナエシ科)の果実に、オトコエシニセハリオタマバエが寄生して、虫こぶが出来ます。

正常な実に比べ、異常な大きさです。(10月上旬)

中の虫室は繋がっていて、オトコエシニセハリオタマバエの幼虫が数匹います。(12月上旬)

薄黄色の幼虫でした。(12月上旬)

カゴノキハイボブフシ(鹿子の木・葉・疣・附子)
カゴノキ(クスノキ科)の葉に、フシダニの一種の幼虫が寄生して、虫こぶが出来ます。

葉の表面に疣が沢山出来ます。(12月下旬)

茶色い細かい繊維のようなものがありましたが、ダニはいませんでした。((12月下旬)

カマツカハミャクコブフシ(鎌束・葉脈・瘤・附子)
カマツカ(バラ科)の葉脈に、タマバエの一種の幼虫が寄生して、虫こぶが出来ます。

葉脈の裏側に出来ます。(6月下旬)

多数の幼虫が入ってるそうですが、葉脈に隙間があり、出たかも知れません。(6月下旬)

クリメコブズイフシ(栗・芽・瘤・髄・附子)
クリ(ブナ科)の腋芽などに、クリタマバチの幼虫が寄生して、虫こぶが出来ます。

新芽に出来ています。(5月下旬)

葉の主脈にも出来ています。(5月下旬)

中に虫室が2つあり、中に幼虫が1匹ずついました。(5月下旬)

ケヤキハフクロフシ(欅・葉・袋・附子)
ケヤキ(ニレ科)の葉に、ケヤキヒトスジワタムシの幼虫が寄生して、虫こぶが出来ます。

ケヤキの葉の表面に拳のような虫こぶ

中は空洞で、アブラムシの仲間であるケヤキヒトスジワタムシがたくさん棲む

シキミハコブフシ(樒・葉・瘤・附子)
シキミ(シキミ科)の葉に、シキミタマバエの幼虫が寄生して、虫こぶが出来ます。

葉の表面が膨れています。(11月中旬)

ひっくり返すと、裏側も膨れています。(11月中旬)

中に幼虫が1匹ずついます。(1月上旬)

シラヤマギクカワリメフシ(白山菊・変わり芽・附子)
シラヤマギク(キク科)の葉に、タマバチ(不明)の幼虫が寄生して、芽のような虫こぶが出来ます。

根生葉の上に沢山の芽のようなものがついています。(11月上旬)

葉の色が緑から赤へ変わっていきます。(11月上旬)

芽の中心部にタマバチの一種が1匹いました。(11月上旬)

ソヨゴメタマフシ(そよご・芽玉附子)
ソヨゴ(モチノキ科)の腋芽に、ソヨゴタマバエの幼虫が寄生して、虫こぶが出来ます。

ソヨゴタマミバエの成虫が腋芽に卵を産み付けると、膨らむのでしょう。(11月上旬)

トンネルは幼虫の居場所であり、食べた跡でしょう。(12月下旬)

一つのコブを調べると、太さ2mm×長さ3mmの5匹の幼虫がいました。(12月下旬)

タブノキハウラウスフシ(椨の木・葉裏・臼・附子)
ホソバタブ(クスノキ科)の葉の裏に、タブノキウスタマバエの幼虫が寄生して、虫こぶが出来ます。

タブノキウスタマバエの成虫が葉裏に卵を産み付ける。(1月下旬)

中を割ると空洞、中に幼虫が1匹。(1月下旬)

白い幼虫が1匹ずつ。(1月下旬)

タンナサワフタギハフクレフシ(耽羅沢蓋木・葉・膨れ・附子)
タンナサワフタギ(ハイノキ科)の葉に、タマバチ(不明)の幼虫が寄生して、虫こぶが出来ます。

葉の端の方に虫こぶ(11月上旬)

葉の中に丸い虫こぶ(11月上旬)

中から白い幼虫が1匹。(11月上旬)

ツクバネウツギメフクレフシ(衝羽空木・芽・膨れ・附子)
ケツクバネウツギ(スイカズラ科)の芽に、タマバチ(不明)の幼虫が寄生して、虫こぶが出来ます。

枝の先端に虫こぶ(9月下旬)

一断面でも多数の虫室(9月下旬)

中からオレンジ色の幼虫が多数(9月下旬)

ツツジミマルフシ(躑躅・実・丸・附子)
コバノミツバツツジ(ツツジ科)の実に、タマバエ(不明)の幼虫が寄生して、虫こぶが出来ます。

この時期は緑色をしています。(6月中旬)

まるで小さなジャガイモのようです。(10月上旬)

虫室が繋がっていて、沢山のタマバエの幼虫がいます。(10月上旬)

ツルニガクサツボミフクレフシ(蔓苦草・蕾・膨れ・附子)NEW
ツルニガクサ(シソ科)の蕾に、グンバイムシ科ヒゲブトグンバイの幼虫が寄生して、虫こぶが出来ます。ニガクサと同じ幼虫です。

つぼみが膨れます。(8月上旬)

中にヒゲブトグンバイの幼虫がいました。(8月上旬)

大きさの異なる幼虫がいました。(8月上旬)

テイカカズラメサキフクレフシ(定家葛・芽先・膨れ・附子)
テイカカズラ(キョウチクトウ科)の頂芽に、テイカカズラミタマバエの幼虫が寄生して、虫こぶが出来ます。

この時期は緑色です。(10月上旬)

一部が赤く変化しています。2つペアにできています。(12月中旬)

ナラメイガフシ(楢・芽・毬・附子)
コナラ(ブナ科)の芽に、ナライガスギバチの幼虫が寄生して、虫こぶが出来ます。

コナラの冬芽です。(12月下旬)

コナラの芽にでき、まるでいがぐりのようです。(8月上旬)

ニガクサツボミフクレフシ(苦草・蕾・膨れ・附子)
ニガクサ(シソ科)の蕾に、グンバイムシ科ヒゲブトグンバイの幼虫が寄生して、虫こぶが出来ます。中は空洞です。

つぼみが膨れます。(5月中旬)

中にヒゲブトグンバイの成虫がいました。(8月下旬)

幼虫はバルタン星人に似ているそうです。(8月下旬)

ヌルデミミフシ(ぬるで・耳・附子)
ヌルデ(ウルシ科)の葉に、ヌルデシロアブラムシの幼虫が寄生して、虫こぶが出来ます。中は空洞です。

羽状複葉の葉軸の一部が膨れます。(9月下旬)

中は空洞で小さな虫でいっぱいです。(9月下旬)

ヌルデシロアブラムシの幼虫です。(9月下旬)

バラハタマフシ(薔薇・葉・玉・附子)
ノイバラ(バラ科)の葉に、バラハタマバチの幼虫が寄生して、虫こぶが出来ます。

羽状複葉の小葉の一部に球状のものが衝いています。(7月中旬)

中を割ると、真ん中に虫室が一室あり、幼虫は小さいためか、見当たりません。(7月中旬)

よく見ると、透明な小さい幼虫がいました。(7月中旬)

ヒヨドリバナハナフクレフシ(鵯花・花・膨れ・附子) NEW
ヒヨドリバナ(キク科)の頭花に、ヒヨドリバナハナタマバエの幼虫が寄生して、虫こぶが出来ます。

頭花が塊状に肥大します。(9月下旬)

沢山の虫室ができます。(9月下旬)

幼虫が数多くいます。(9月下旬)

ブナハウラコメツブフシ(山毛欅・葉裏・米粒・附子)
ブナ(ブナ科)の葉裏に、ブナハウラコメツブタマバエの幼虫が寄生して、虫こぶが出来ます。落葉のまま越冬し、来春に羽化します。

主脈と側脈の分岐にできます。(11月下旬)

虫こぶが長さ2mm強、幼虫はかなり小さいと想像できます。(11月下旬)

マタタビミフクレフシ(木天蓼・実・膨れ・附子)
マタタビ(マタタビ科)の実に、マタタビミタマバエの幼虫が寄生して、虫こぶが出来ます。

右側が正常な実、左側がマタタビミタマバエの卵が産み付けられた実です。(8月中旬)

表面が凸凹になります。薬用酒に使われます。(8月中旬)

落下した実にマタタビミタマバエの幼虫がいました。(8月下旬)

マルバハギハトジタマゴフシ(丸葉萩・葉・閉じ・卵・附子)
マルバハギ(マタタビ科)の葉に、タマバエの幼虫が寄生して、卵のような形の虫こぶが出来ます。

葉が二つ折りに合わさって閉じて卵のように丸くなります。(5月中旬)

虫室が大きいほど幼虫の数も多くなっています。(5月中旬)

タマバエの幼虫がいました。(5月中旬)

ヨモギクキワタフシ(蓬・茎・綿・附子)
ヨモギ(キク科)の茎に、ヨモギワタタマバエの幼虫が寄生して、虫こぶが出来ます。

茎の周りにできます。高級もぐさに使われます。(10月中旬)

表面は綿状に見えるが、中は固い、オレンジ色の幼虫が1匹いました。(10月中旬)

ヨモギハシロケタマフシ(蓬・葉・白毛玉・附子)
ヨモギ(キク科)の茎に、ヨモギシロケタマバエの幼虫が寄生して、虫こぶが出来ます。

葉の裏に出来ます。(8月中旬)

表面は綿状に見えるが、中は固い、幼虫が1匹いました。(11月上旬)

リョウブハタマフシ(令法・葉・玉・附子)
リョウブ(リョウブ科)の葉に、タマバエ(一種)の幼虫が寄生して、虫こぶが出来ます。

葉の表の一部が半球状に膨れます。(5月下旬)

裏側も半球状に膨れます。(5月下旬)

中には虫室が1室、朱色の幼虫が1匹いました。(5月下旬)

 注)間違っている箇所、疑問の点がございましたら、メールを頂ければ有り難く思います。

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