00.03.26
ナンバンギセルの想い
05.05.10
石見川草

《ナンバンギセルの想い》 00.03.26

道のへの尾花が下の思ひ草今さら更に何をか思わむ
(万葉集・巻十・二二七〇)

 このおもいぐさ(ナンバンギセル)は、ちょっと首を傾げながら、うなだれた風情で思いに耽っている美女と見立てたと言い、想い草と呼んでいた。
 今はナンバンギセルが本名となってしまった。ちょうど昔のマドロスパイプ形の花なので、四百年ほど前にこの名が付いたと言われている。
 平成十一年九月五日に「いわわきネイチャークラブ」の例会があった。岩湧山の頂上周辺のカヤの原の中に、ナンバンギセルがあるとのことで、ススキの原の中に分け入ってみたが、なかなか見つからなかった。咲いてしまった花殻を辛うじて見つけたものである。
 私は近畿のあちらこちらの山行きで、何回かナンバンギセルの花を見てきた。その多くは日当たりの良い山道の一隅にあったススキの草むらのなかで見たのが多い。
 今回は私たちが岩湧山頂の少し西寄りのカヤの原に潜り込んだ所は、カヤが密集して外の展望は利かず、茂ったカヤの下部には湿気があり、ナンバンギセルが見つからなかった。蝮が子を産む時期で注意を要する事などが脳裏に浮かんできたので、早々にカヤの中から出てきた。
 今から十年ほど前になる。大阪南港の野鳥園へ行くとき、ニュートラム南港ポートタウン線の中埠頭駅から歩いたことがある。途中の歩道の傍らの草むらの中に、ナンバンギセルの花が幾つか咲いていた。今でも咲いているだろうか。
 ナンバンギセルは全体に赤みを帯びるか、又は淡褐色でやや肉質の花茎を出す一年草である。主にススキ、チガヤ、ミョウガなどの植物に寄生して必要な養分を横取りしながら生活しているという。
ともあれ、万葉人のロマンを秘めた想い草を、来年は早めの時期にカヤ原に分け入って探してみようと思う。

(山本 繁夫)


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