01.10.18
植物についての概要
04.01.27
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植物用語の図解
01.10.18
植物についてエトセトラ

植物についての詳細》 02.01.27

植物について詳しく調べる。日本百科大事典(小学館 昭和38年初版)から引用する。

(上田泰二郎)

1.種子植物の構造
1-1.花 1-2.葉
1-3.茎 1-4.根
2.種子植物
2−1.裸子植物
2-2.被子植物
3.シダ植物
−−−−−−−−−−−−−−−−−<以下、抜粋>−−−−−−−−−−−−−−−−−
1.種子植物の構造
1-1.花
花 葉
 種子のできる高等な植物だけに見られるもので、根、茎、葉が主に栄養の働きに関係するのに対して、花は生殖に関係する器官である。花を構成している各要素は、結局は葉の変態したもので、花葉と呼ばれる。これには雄しべ、雌しべ、花弁、萼片、苞葉などがあり、そのうち、雄しべと雌しべは花の本来の働きである生殖に直接関係する実花葉と呼び、生殖に間接的に関係する花弁、萼片、苞葉などを裸花葉と呼んで区別する。
花 被
 裸花葉のうち、萼片と花弁の区別がないとき、その集まりを花被というが、広義には両者を総称しても使う。花には花被のないもの(ドクダミ、コショウなど)があり、これを無花被花という。花被が一重に配列しているもの(ハンノキ、ブナノキなど)を単花被、花被が内外二輪に配列するものを複花被といい、複花被の内輪と外輪が同質のもの(メギ、ユリなど)を同質複花被、又は単に同複花被といい、内輪と外輪の異なるもの(サクラ、ツツジなど)を異質複花被、又は単に複花被という。この場合、外輪を萼片、内輪を花冠といい、特に花冠(花びら)が一枚ずつ分かれているときそれを花弁という。花弁が癒合しているもの(ツツジやアサガオなど)を合弁花冠、分離していいるもの(タチアオイ、バラ、エンドウ、ユキノシタなど)を離弁花冠という。これと同様に、萼片にも合弁萼片と離弁萼片の区別がある。
花 序
 花葉一個単独に咲く場合と、多くの花が集まって咲く場合とがある。花の付き方には一定の規則があり、それを花序という。
 花の花軸上に置ける配列様式をいうが、花の開く順序から無限花序有限花序に大別される。無限花序は、花軸の下の方から順に咲き上がっていくもの(アブラナ)、有限花序は花軸の先端から順に咲くもの(ジンチョウゲ)。花序の形は多種多様で一つの花が単位で花序をなしている単性花序と、花序が一つの単位となっている複花序とがある。
 単性花序の内、無限花序に属するもの。
(1) 穂状花序 花軸に無柄の花がつく。(オオバコ、コナラ)
(2) 総状花序 花軸に有柄の花がつき、花序は円筒形又は円錐形をなす。(フジ、オカトラノオ)
(3) 散房花序 総状花序の下方の花柄ほど長く頂部では同じ長さくらいになるもの。(オミナエシ、アブラナの若い花序)
(4) 散形花序 有柄の花が花軸の先端から放射状に出て傘状につく。(カクレミノ、チドメグサ)
(5) 頭状花序 花軸の頂上は凹形、扁平、円錐形の花序をなし、その上に無柄の花を密に付ける。(タンポポ、マツムシソウ)
(6) 隠頭花序 花軸は、つば状の花床をつくり、内面に有柄の花をつける。(イチジク)
 有限花序に属する集散花序(主軸の下から1〜数本の側枝を出し、その先端に頂花をつける)の他にも、側枝の出し方によって、また分けられる。
(1) 単出集散花序 頂上鼻の下に1本の花軸を出す。(アヤメ)
(2) 互散花序 側軸が左右交互に生じる。(グラジオラス)
(3) 巻散花序 側軸は常に一方の側から生ずるため、次第に巻いて行く。(ワスレナグサの先端の花序)
(4) 二枝集散花序 主軸は頂花で終わり、その下方から対生する2本の側軸を出し、さらにその側軸の下方から対生する側軸を出す。これを繰り返して行くもの。(ハコベ)
(5) 多出集散花序 主軸は頂花で終わり、その下方から3本以上の輪生する側軸を出し、その側軸がさらに同じように側軸を出すことを繰り返す。(トウダイグサの胚状花の配列)
(6) 団集花序 主軸は頂花で終わり、無柄花を密に主軸の側面から上につけて行く。(ワレモコウ)
(7) 単頂花序 分枝しない茎の頂に1花をつける。(チューリップ、イチチンソウ)
 複花序は以上の単性花序の一つが単位となり花序をなすが、同型の花序の合わさったもの(複散形花序は散形花序が一つの単位となり、さらに散形花序をなしているもの。セリ、ニンジン)、異形の混じった混合花序(輪状集散花序は多出集散花序が総状に配列。アキノタムラソウ)など組み合わせは多様である。
 花の形にはバラ、サクラ、アブラナなどのように、中心を通る何本かの線で左右対称形をなす放射相称花と、ハッカ、キク、マメ、ランなどのように、中心を通ってただ一つの相称面しか存在しない左右相称花とがあり、前者を整斉花、後者を不整斉花という。
配 列
 雄しべ、雌しべ、花被がどのように配列しているかにより、非輪生花半輪生花輪生花の3通りに分けられる。非輪生花は各花葉が螺旋状に連続して配列するもので、最も原始的なものである。半輪生花は花被は輪生するが、雄しべは螺旋状に配列するもの(モクレンなど)である。輪生花は花葉すべてが輪生するもので、最も普通に見られる。また、このような花葉の配列を式で表したり、図で表したりするものが、花式および花式図*である。
花式図
 一つの花を構成する花葉の種類、数、配置状態を記号と数字で表す式を花式といい、図で表すとき花式図という。
 花式は、花被をP、萼片をK、花弁をC、雄しべをA、心皮(雌しべ)をGで示し、その数を数字で表す。各花葉がいわゆる八重の場合には外輪の数と内輪の数との間に+を付け、欠如している場合には0で示す。花場が癒合する場合には、数字を( )で囲む。器官の数が正当の数より倍加しているときには2の指数を付ける。子房上位(萼、花弁、雄しべがともに花床より生じ、子房の付け根がこれより上位にあるもの)は、心皮の数の下に−を、子房下位は上に−を付ける。
 例として、アブラナの花式は、K2+2C4A2+22G(2)で、4枚の萼、2本と4本で形6本の雄しべmそして2心皮が癒合して1本の雌しべをなし、子房は上位である。チューリップは、P4+4A4+4G(4)で、8本の雄しべ、4心皮が癒合した1本の雌しべからなっていることを示している。

雌 雄
 花には雄しべと雌しべがあるが、一つに花にこの両方が揃っているもの(サクラ、ツツジ、ユリなど)を両性花または完全花という。これに対して雄しべはあるが、雌しべが発達せず殆どないか、或いはあってもその機能を失っているものがあり、これらの花を単性花または不完全花という。そのうち、雄しべのあるものを雄花、雌しべがあるものを雌花という。単性花が同じ株にある場合(カボチャ、クヌギなど)を雌雄同株、別の株にある場合(ヤナギ、イチョウなど)を雌雄異株という。
受 粉
 雄しべは細い糸状の花糸と呼ばれる部分と、花粉の入った袋の葯と呼ばれる部分からなる。雌しべは子房と柱頭からなり、子房と柱頭の間は花柱で連絡されている。花粉が柱頭に運ばれると、そこで発芽して花粉管を伸ばし、これが花柱を通って子房に達し、卵子に近づく。卵子の中には卵細胞があり、これと、花粉から放出された精子とが結合して胚、すなわち次代の植物ができる。昆虫が雄しべの花粉を雌しべに運ぶのを虫媒花、風が花粉を運ぶのを風媒花、鳥がこれを行うものを鳥媒花、その他特殊な動物によって行われるものを動物媒花という。
胚 珠
 花の主要目的である生殖の最も重要な部分は、次代を形成する種子であるが、種子は子房の中にあるごく小さな胚珠より形成される。裸子植物の胚珠は開いたままの心皮に付着してできるので、外部に裸出しているが、被子植物では子房内に見出される。胚珠の大部分を占めているのは比較的小さな細胞からなっている胚珠心と呼ばれる組織で、この中に胚嚢が詰まっている。胚珠心のまわりは珠皮で囲まれ、珠皮の上方には珠孔と呼ばれる小さな孔が見られる。胚珠心の内部には最初、胚嚢細胞が形成されるが、やがてこの胚嚢細胞が分裂して雌性の配偶体すなわち胚嚢となる。胚嚢の構造は、裸子植物と被子植物では違っている。裸子植物では胚嚢細胞が胚珠心で著しく大きくなり、まず核だけが分裂を繰り返して多核となりう、その後、細胞膜ができて多核の細胞からなる胚嚢(胚乳)となる。そして、その上部に簡単な構造を持った蔵卵器を形成する。被子植物の胚嚢は退化していて、蔵卵器の形成は見られない。はじめ胚嚢細胞の核が分裂して8個の核となり、そのうち2核が中央に位置して極核となり、残りの6個の核のうち3個の核は上方に位置して細胞膜を生じ、2個は助細胞、1個は卵細胞となる。その残りの3個の核は下方に位置して下方に位置し、細胞膜を生じて3個の反足細胞と呼ばれる。卵細胞が1個の雄性の核と受精すると同時に極核も1個の雄性核と癒合して3核の胚乳を作る。被子植物の胚珠は珠孔の反対側にある珠柄によって胎座(胚珠が子房の内壁に付着する点)に着くが、胚珠の付着点に対してとる位置により、直生胚珠倒生胚珠湾性胚珠と呼ばれる。
子 房
 子房は普通他の花葉の付着する位置により上位にあるものであるが、花葉の付き方にも変異があり、普通上位のものを子房上位、花被、雄しべなどが子房壁と上位まで癒合して、他の花葉の付着点より子房の位置が下位にあるものを子房下位、他の花葉が癒合して子房を包み、或いは花葉と同位置にあるものを子房中位という。


1-2.葉
 維管束植物の茎に側生する、扁平な器官で、一般に内部に葉緑体を含み光合成を行う主要な器官である。
【外部構造】
つくり
 ふつうの葉は葉身、葉柄、托葉の3部からなるが、葉柄や托葉を欠く場合もある。
付き方による分類
 葉身は針状の場合もあるが、ふつう扁平で、1枚の葉身からなる単葉と2枚以上の小葉からなる複葉があり、複葉には羽状(ネムノキ)、掌状(アケビ)、三出複葉(クズ)などがある。
付く位置による分類
 葉柄または葉身の基部が鞘のように茎を抱いている場合は、その部分を葉鞘という。また、その位置により高出葉、低出葉、子葉*などの別がある。高出葉は花の直下につき、ふつう包葉*という。低出葉は地下茎や冬芽を覆う鱗片状で、地下茎では貯蔵器官に、冬芽では保護器官となる。変態して捕虫葉(食虫植物)、巻きひげ(つる性植物)、針(サボテン)に変わる場合もある。
*子 葉
 種子植物の胚発生で最初に形成される葉を言う。その数、構造、働きは植物によって異なる。
 裸子植物ではビャクシンは2枚。イチョウは3枚、マツは6〜12枚の子葉をもつ。
 双子葉植物では一般に2枚の子葉がある。種子の発芽後、地上に子葉が開く場合を地上子葉(アサガオ、インゲン)、また、地下に残る場合を地下子葉(ソラマメ、クリ)という。地上子葉は緑色となってしばらく光合成を営む。胚乳種子では養分は胚乳中に蓄えられるため、子葉はふつうの葉と同様な形(カキ、トウゴマ)であるが、無胚乳種子では養分は子葉中に蓄えられるので、子葉は一般には多肉(マメ科、アブラナ科)となっている。
 単子葉植物では子葉は1枚で、胚の頂端にあり、幼芽はその基部側方にある。子葉の形は種類により異なり、ネギでは針状で発芽後、先端を種子中に残し、胚乳から養分を吸収するが、後に種皮を脱いで立ち上がり、同化器官として働く。イネ科では子葉は胚盤として胚乳に密着し、養分を吸収して胚に送る働きをする。
*包 葉
 芽や花のつぼみを覆って保護している平らな葉のうち、比較的大型のものを指し、鱗片葉というのは小型のものを指す。一般には高出葉ともいわれ、花や花序をつぼみの時期に包み込んで保護し、ふつうの葉よりやや単純な形で、葉柄のない場合が多い。ふつうは葉緑体を含み光合成を行うが、ノウルシのように花弁状になる場合もある。また、花序の周囲に多数の包葉が集まったものは特に総包といい、タンポポなどの頭状花序の外側の萼状のもので、分類状の特徴の一つとなる。ドクダミやヤマボウシの花で白色花弁状のものも総包であり、クリのいが、シイやカシのどんぐり(果実)の基部にある皿状のものも変化した総包である。

【内部構造】
 葉の一般構造は表皮、維管束*、基本組織の3部からなる。
裸子植物の場合
 裸子植物では一般に表皮の外面は厚いクチクラで覆われ、その内側に外皮、内部に葉肉(葉緑体をもつ柔組織)がある。さらにその内側には、幾つかの樹脂道がある。維管束を含む中心柱は明らかな内皮で包まれ、この点は種子植物の葉と異なる。
被子植物の場合
 被子植物では葉の表裏が明らかで、ふつう表皮が一層の細胞からなり、クチクラ*やろう質を分泌して内部を保護する。裏面の表皮に気孔が分布するが、イネ科では両面、スイレンでは表皮だけある。葉肉は表面の表皮下にある葉緑体を含む細長い1〜数層の細胞からなる柵状組織と裏面の表皮に接し、細胞が不規則に並んだ細胞間隙の多い海面状組織からなる。葉肉内を縦横に細い維管束が分布し、これを葉脈といい、葉肉内細胞へ水や養分を供給したり、また同化産物を集めて茎へ送る機能を持つ。
    
*クチクラ
 生物の表皮細胞(植物)または上皮細胞(動物)が体表に密着して分泌した、堅い膜状の物質層のことで、角皮ともいう。主に内部から水分発散を防止するもので、外部からの物質の進入を調節したり、機械的刺激を防ぐ役割を果たす。
 植物では不飽和度のかなり高い脂肪酸重合物質クチンの骨組みの間にろうが埋まり、さらに細胞膜を作っているセルロースやペプチンの層まで染み込んでいる。成熟した器官ほどよく発達して厚くなり、陸上植物の陽地や乾地のものに目立つ。動物では節操動物に著しく、昆虫類ではキチン質とスクレロチンと呼ばれる硬タンパク質とからなり、甲殻類ではそれに石灰質を含む。

【葉のつき方】
 葉が茎に付着配列する状態は一般に規則正しく、この配列を葉序といい、1つの節に1葉ずつつく互生、二葉つく対生、3枚以上つく輪生がある。

1-3.茎
 シダ植物以上の高等植物の体を構成する主要器官の一つである。
【外部構造】
 ふつう極性(茎の上部にはとなるべき芽が、下部には根となるべき芽が既に内在している)をもった軸状の構造で、地上に立ち、上方に生長しながら葉、枝、生殖器官などをつける。下部は根に連なる。発生的には茎は種子の中に含まれる胚の胚軸から由来したもので、その先端の生長点の働きによる細胞の増殖と生長点より下部の細胞の伸長によって生長する。茎の先端の生長点は根の生長点と異なり、露出していることが特徴で、細胞の増殖を行いながら、葉や枝、生殖器官などを作り出し、また、内部では茎特有の内部構造が分化している。茎には1,2年で枯死する草本と、第二次肥大成長により長年にわたって太く発達する木本とがある。いずれの場合も葉の付着点を節といい、節と節の間を節間という。通常、葉の付け根には腋芽があり、これは枝に発達する。また、茎につく葉の位置には規則性が見られ、それを葉序という。節間は伸長しない場合もあり、草本の場合、地表面に葉を広げ、ロゼットと呼ばれる(タンポポ)。
【分類】
 茎は一般には地上に発達するが、地下に伸びる地下茎もある。地上茎にも地下茎にもいろんな変化が見られる。例えば地上を這って生長する匍匐茎(イチゴ、ユキノシタ)、つる植物のように茎で他物に巻き付いて生長するもの(アサガオ、インゲンマメ)、茎が変態して巻きひげとなるもの(カボチャ、ブドウ)、茎が棘のように変わる場合(サイカチ、カラタチ)、葉のように平らになる場合(ナギイカダ、カニサボテン)、また葉が退化して茎が同化作用を行いようになったり(トクサ、サボテン)、肥大して貯水組織をもち砂漠などの乾燥地に適した構造となったもの(サボテン)などがある。一方、地下茎では地中を横に生長する根茎(ハス、ハラン)、肥大して養分の貯蔵器官となった塊茎(ジャガイモ、キクイモ)や球茎(クワイ)、節間が短縮して多肉の鱗片葉を密生した鱗茎(ユリ、タマネギ)などがある。

【内部構造】
 茎の構造は植物の種類によって非常に異なっているが、一般に外側は表皮組織でおおわれ、葉のような気孔が散在する。中心には髄があり、その周囲には維管束組織がある。表皮と維管束の間の柔組織は皮層と呼ばれる。表皮系を除いた内部の基本組織と維管束をまとめて中心柱という。シダ植物では中心柱の外側に一層の内皮が他の植物よりはっきりしているため、中心柱は明らかである。中心柱には次のようにいろいろな形がある。
(1) 原生中心柱 維管束は単一で、中央から木部、師部、内皮がある。シダ植物の若い茎、ウラジロ、カニクサなどに見られる。
(2) 管状中心柱 維管束が管状になっていて、管状の木部の内側と外側とに師部と内皮とがある。シダ植物の大部分に見られる。
(3) 真正中心柱 多くの並立維管束が管状に並び、一つの共通の内皮で取り巻かれる。シダ植物のトクサ類、裸子植物、被子植物の双子葉植物に見られる。
(4) 不整中心柱 並立あるいは包囲維管束が不規則に散らばり、一般に内皮を欠く単子葉植物の茎に多く見られる。
(5) 放射中心柱 木部と師部が交互に独立して配列し、周りを内皮が囲む。そのため断面が放射状を呈する。シダ植物中のヒカゲカズラ類とすべての植物の根に見られる。
 皮層には葉緑体を含み同化組織となっている場合が多く、また繊維、厚膜組織、厚角組織などが発達したり、樹脂道、乳管、結晶細胞などを含むこともある。形成層が発達し、年々茎が太く生長する木本植物では、一般に最初にあった表皮は破れ、表面には気孔の代わりに皮目と呼ばれる小孔芽できる。

1-4.根
 根は高等植物の主要器官で、一般に地中にあって植物体の地上部を支え、地中から水分とともに無機塩類などを吸収する。
種 類
 裸子植物と双子葉植物の根は、太い主根と多数の細い側根からなっているが、多くの単子葉植物は多数のひげ根からなっている。挿し木にでる根や地下茎から生える根は不定根と呼ばれる。特別な働きとしては、根は肥大して貯蔵器官となったり、植物体を他物に密着させる付着根、呼吸を助ける呼吸根(気根)となったりする。
形態上の特徴 
 形態上の特徴は、先端に根冠があって生長点を保護し、若い部分の表皮には多数の根毛がある。根の生長は生長点における細胞の分裂繁殖と、生長点より少し離れた部分の細胞の伸長からなっている。
内部構造
 内部構造は、外側は一層の表皮に覆われ、中心には放射維管束*があり、その周囲を内皮が取り囲んでいる。内皮と表皮との間の組織を皮層という。側根がでる場合には一般に内皮のすぐ内側の内鞘細胞が分裂して新しい生長点となり、皮層を突き破って外部に出る。側根の生長点は原生木部のそばにできるので木部の数と側根の数が一致する場合が多い。裸子植物と木本の双子葉植物の根では、木部と師部との間に形成層ができ、その働きで二次組織を作り、茎の場合と同様に第二次肥大成長を行う。
利 用
 根は食用となるものもあり、生薬の原料となるもの、色素をとるものなど、いろいろ利用されるものが多い。

*維管束 シダ植物および種子植物の根や茎、葉を骨格のように貫いている組織である。維管束は、水分の通路となる木部と養分の通路となる篩部からなり、これを形成している細胞は壁が固く、全体としては植物体を強固に支える働きがある。維管束は、はじめ根端および茎頂の生長点に現れる前形成層という細長い細胞の集まりから発達するが、これを第一次維管束という。また、裸子植物および双子葉植物の中で、木となって茎が年々増大する植物では、第一次維管束の木部と篩部との間に形成層ができ、それから内側に木部、外側に篩部をつくる。このように二次的に形成された維管束を第二次維管束という。
 木部は導管、仮導管、木部繊維、木部柔組織からなり、その壁は木化して厚くなっている。導管は仕切りのない管状のもので、壁の内側に様々の模様があり、その形成に従って環紋、螺旋紋、階紋、網紋などの区別がある。これは水分上昇の通路となっている。仮導管は機械的作用と通路作用とを兼ねており、管には仕切りがある。一般に裸子植物は仮導管だけで導管はない。木部柔組織は貯蔵組織となる。


2.種子植物
 種子を持って生育する植物を総括していい、植物分類上一つの門をなしている。花を開き、種子を作るので顕花植物と俗称されている。しかし、シダ植物の中にも器官学的に考えると胞子葉が集合した花穂を持つものがあったり(スギナ、ヒカゲカズラ)、種子植物でもソテツ類は種子を持っているが花はなく、他の器官はシダ植物と区別がつかない。また、クラマゴケに近縁の化石シダにも種子を持つものがあるなどの点でシダ植物と種子植物とを厳密に区分することはできない。そこでシダ植物以上を維管束植物としてまとめる場合もある。分類上は裸子植物と被子植物の二つの亜門に分けられる。
2−1.裸子植物
 被子植物の対立語で、種子植物のうち胚珠が心皮で包まれず裸出している一群である。
分 類
 現存するものにソテツ類、イチョウ類、マツ類、グネツム類があり、化石として知られているものにソテツシダ類、カイトニア類、ベンチテス類、コルダ木類がある。これらを胚珠が裸出するという共通点のもとに、1843年裸子植物として分類系に採用したのはブロンギャルトである。しかし、現在では、裸子植物は維管束植物中の被子段階に到達する前段階のものとして考える傾向が強くなっている。
特 徴
 一般に花は雌雄異花で、花被がなく、体は木本、維管束には道管はなく木部は仮道管からなる。しかし、グネツム類には花被を持った花があり、木部には道管もある。また、胚珠中の造卵器の中で卵細胞と腹溝細胞がそれぞれ精核と合体し、被子植物のいわゆる重複受精に似た現象が見られるなど、被子植物に近い性質を多く持っている。一方、イチョウ類の短枝上に生じる花柄と葉柄中の維管束の分枝法は、シダ類のハナヤスリ類の実葉柄、裸葉柄中の維管束の分枝法と同形式と考えられ、ソテツシダ類は種子を生ずるという以外の体制や形態はシダ類と殆ど変わらず、シダ類にきわめて近縁な一群である。このように裸子植物にはシダ植物に近いものから被子植物に類似のものまで異質な数群が含まれている。
利用  裸子植物の人類に対する価値は大きく、大森林の形成を始め、木部の建築材、製紙パルプとしての利用、葉の芳香精油分や樹脂も有益な用途がある。

2-2.被子植物
 裸子植物の対語で、ともに種子植物の二大群をなしている。
特 徴
 シダ植物やソテツ類にみられる大胞子葉に相当する心皮に包まれて胚珠が生じ、めしべに柱頭、花柱および基部の子房の分化がみられる植物を総称する。裸子植物は心皮が葉状で、その上に胚珠が露出して生じるという共通点を除いて異質な群の集団であるのに比べ、被子植物は比較的純一な一群であると考えられる。裸子植物と、被子植物の最も重要な相違点は、前者は胚珠中の1卵核に、1精(雄)核が合体するのに対し、後者では花粉管核のほかに2個の精(雄)核を生じ、胚珠の珠心中に胚嚢を作り、胚嚢中の卵核、極核はそれぞれ精核と合体する、いわゆる重複受精を行うことである。
進 化
 被子植物が、どんな植物から進化してきたかはよく分からないが、ある種の裸子植物からであろうと考えられている。人類と関係深い植物の大部分は被子植物に属する。進化史上は白亜紀後半から繁茂したが、その起源はもっと古い。シダ植物が衰え始めた頃より現れ、現在は最も優勢な植物である。


2-2-1.双子葉植物
 被子植物を単子葉植物と対立して二分する分類群。フランスのジュシューが初めてこの分類群を認識した。被子植物の胚における子葉が2個またはそれ以上であることを取り上げて、子葉を1個しか持たない単子葉植物と区別する(例外として、子葉が移植して1個しかない双子葉植物もある)。この子葉の数は系統的にも重要な形質であり、その他の付随的な形質においても、双子葉植物はまとまった自然群であると認められている。単子葉植物とは子葉の数の他、葉脈の状態、維管束系、花部機関の基本数(4、5数性)などの点で異なる。花弁が環状に癒着するかいなかにより合弁花類(キク、キキョウ、アサガオ、ツツジなど)、離弁花類(サクラ、アブラナ、スミレなど)に2大別される。

2-2-2.単子葉植物
 被子植物を双子葉植物と対立して二分する分類群。フランスのジュシューが、子葉のない無子葉類、1枚持つ単子葉類、2枚以上持つ双子葉類に分類したのに始まる。双子葉類との区別は、子葉の数の他に、維管束が茎内に不規則に多数はしる閉鎖維管束(不整中心柱)であること、葉は平行脈を持つこと、根はひげ根で、主根と支根の区別がないこと、花部器官の基本数が3数性であること、維管束には形成層がなく、従って殆どが草本であることなどである。代表的なものにイネ、アヤメ、ユリ、ショウガ、ランなどが挙げられる。
3.シダ植物の概要
3-1.他植物との違い

 植物分類上の一つの門を形成する維管束植物の一つで、種子植物と異なる点は、その生活環境である。すなわち、花や種子を持たず、無性的に胞子を作り、これが発芽して独立生活を営む有性の配偶体を作り、これによってできた卵子と精子の接合により新しい植物(胞子体)をつくることにある。
 しかし、器官学的に見れば、シダ植物の中にもスギナやヒカゲノカズラなどのように花穂をもつものがあり、種子植物の中にもソテツ類のように種子を持ちながら葉や茎がシダ植物とよく似ているものもあり、両者をはっきり区別することはできない。
 コケ類との違いは、配偶体よりも胞子体の方が良く発達し、それぞれが独立して生育する点と、茎・葉・根の区別があり、体内には維管束組織を持つことである。
 しかし、下等なシダ植物体制上でも、発生学的にみた場合でも似た点が多く、両者の間に関連性が認められる。
 なお、コケ類とシダ植物は、配偶体の造卵器や造精器の形がよく似ていることから、造卵器植物として一つにまとめる分類法もあるが、陸上生活に必要な維管束を持つ点で、シダ植物は種子植物とともに維管束植物とすべきものである。

3-2.生 殖
 典型的な世代交番がみられ、無性世代の胞子体が植物の本体をなし、有性世代の配偶体は前葉体と呼ばれ、造精器と造卵器ができる。精子は螺旋状で一般に多数の毛を持ち、水によって造卵器にできた卵子のところに達し、接合して胚を作り、それが成長して胞子体となる。胞子体は陸上植物として完全な体制を整え、胞子嚢は胞子体の葉の裏面に生じて胞子を形成するが、このとき減数分裂がおこり、染色体数が半減する。ときには葉全体が胞子葉になるもの(ゼンマイ)、胞子葉が茎の先に集まって穂をつくるもの(スギナ)もある。また、種類により、同型胞子をつくるものと、大胞子と小胞子の異型胞子をつくるものがある。この場合、同型胞子からは,雌雄同株の配偶体を、異型胞子体からは、雌雄異株の配偶体を生じる。


3-3.分 類
 維管束の配列はシダ植物全体を通じて多種多様であり、あたかも維管束植物が陸上生活に適応して進化してきた歴史の縮図を見るようである。胚発生の様式や胞子嚢の成立する起源、葉の配置についても幾つかの型があり、シダ植物が統一の内容を持った植物でないことを物語る。現在では次の5群に大別している。
3-3-1.マツバラン群
 胞子体は同型胞子を形成する。体は単調で、地下茎と二股に分かれた円筒形の細い茎があり、根と葉はない。茎に鱗片状の胞子嚢ができる。胞子が地に落ちて発芽すると、小さい不規則な形の配偶体となる。デボン紀とゴトランド紀(2.6億年〜3.5億年前)によく栄えた植物で、シダ植物中、最も原始的な群と言われ、現生するものは、僅か2属、数種に過ぎない。
3-3-2.ヒカゲノカズラ群
 精子は2毛。胞子体は同型胞子をつくるもの(ヒカゲノカズラ科)と異型胞子をつくるもの(イワヒバ科)とがある。完全な維管束があり、真の根、茎、葉があり、葉は小さく螺旋状に配列し、1本の維管束がある。胞子葉は枝の先端に密生して集まり、その上面に胞子嚢をつける。いわゆる花穂である。石炭紀(2.1億年〜2.6億年前)に非常に栄え大きなものがあったが、今では4属、1000種内外に過ぎず、みな小型の植物である。ヒカゲノカズラ、アスヒカゲカズラ、イワヒバ、クラマゴケなどはある。
3-3-3.ミズニラ群
 胞子体が異型胞子をつくる。精子は十数本の毛を持ち、不飽和な炭化水素(メタンやアセチレン)の刺激で外に泳ぎ出る。非常に短い塊状の根茎が、底の泥の中にあり、白い根が下がっている。葉は線形で長い。流水中や池に生えるミズニラなどがある。
3-3-4.トグサ群
 胞子体の葉は輪生し、胞子嚢は特別な胞子葉(スギナではツクシ)に生じ、花穂をつくる。胞子は同型で4本のリボンのような弾子があり、これが伸びる力で胞子がはじき出される。が異型胞子をつくる。真の根、茎、葉がある。茎には節があり、節から枝又は葉を輪生する。節間には縦に走る溝があり、珪酸が多く含まれていて硬い。石炭紀には非常に栄え、カラミテスのような高さ20m、太さ1mにもなる高木があったが、殆ど死に絶え、現在ではトクサ属の30株内外が生き残っているに過ぎない。
3-3-5.シダ群
 シダ植物のうち最も進化した群で、真の根、茎、葉があり、よく発達した維管束がある。葉が枝から出るとき、枝の維管束から葉の維管束が分離する際、枝の維管束に大きな欠損部(葉隙)ができるような体構造、すなわち大葉を持っている。必ずしも純一な群でなく、次のように分けられる。
(1)古生シダ類
 デポン紀から石炭紀にかけて栄えた植物で、枝が細かく分かれて葉状になるが、葉身がない。
(2)真嚢シダ類
 胞子嚢壁が多層で厚く、同型胞子を形成し、胚発生の第一卵割は水平におこる。リュウビンタイやハナヤスリなどがある。
(3)小嚢シダ類
 胞子嚢壁が一層で薄く、環帯があり、同型胞子を形成する。ゼンマイ、カニクサ、ワラビ、オシダ、コヤワラビなどがあり、いわゆるシダ群の大部分はこのグループに含まれる。
(4)水生シダ類
 胞子嚢壁が薄く、環帯があり、異型胞子を形成し、前葉体は退化縮小している。デンジソウ、サンショウモ、アカウキクサなどがある。

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