花を取らないようにしましょう!花泥棒を見たら注意しましょう!
01.10.19
種の保存法
01.10.19
環境省RDB
03.04.20
大阪府RDB
03.10.10
自然公園法
00.12.07
園芸植物
03.04.20
岩湧山の保護植物

《園芸に利用される山野草》
00.12.07

 郊外の住宅街を歩くと、色鮮やかな海外の園芸品種を咲かせている庭を多く目にする機会がある。ガーデニングが盛んとなる前は山野草がブームで、自然の野草が採取・盗掘されたと聞く。その結果、各地において絶滅してしまった、絶滅の危機を招いている種が数多くあるという。岩湧山でもエビネやクマガイソウなどが今はもう全く見られなくなってしまった。山野草のブームは去ったと言われるが、愛好者には今も根強い人気があるらしい。自然からの採集という誤った認識を持つ業者や愛好家は減り、現在の流通苗は生産品が中心になりつつあると言われる。日本の山野草の人気は園芸品種にない素朴な愛らしさがあり、日本的な癒しをそこに感じるからなのであろうか。今回は、どのようなものが園芸用として人気があるのか、それらには貴重なものが含まれていないかなどを調べることにする。
 園芸用の山野草の例として、「NHK趣味の園芸 新園芸相談F山野草」を資料とする。それには基本として80種あまり、その仲間を含めると、200余りが記載されている。ラン科、ユリ科は特に多く、人気が高いことが分かる。さらに、キンポウゲ科、ユキノシタ科、ナデシコ科、キキョウ科などが挙げられており、全体的に、背丈の低い可愛い花が対象となっている。なかには、ウマノスズクサ科のように葉が対象のものもある。名前が載せられていない仲間のたぐいや地域固有種などを考え合わせただけでも、遙かに多くのものが園芸用として栽培されていると考えられる。
 200余りの中に貴重植物がどれほど含まれているかを調べてみる。絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(種の保存法)により捕獲等が禁止され違反者は罰則される国内希少動植物種5種のうち、園芸用の山野草はアツモリソウなど4種が対象となっている。環境庁のレッドリストに挙げられているのは31%の64種ある。大阪府に生育するもの(69種)のうち、保護上重要な野生生物を掲載する大阪府版レッドデータブックでは35%の24種であり、伐採が禁止され違反者は処罰される、金剛生駒紀泉国定公園における自然公園法第17条第3項第8号の規定により環境庁長官が指定する植物(指定植物)を含めると54%の37種である。因みに、大阪府では種子植物が2,178種、うちRDB掲載種は423種で19%に当たる。これらのことから、園芸用として栽培される山野草はかなり貴重種が多いと言えよう。
 この本では岩湧山に生育する野生種では25種があがり、その中で40%に当たる10種が貴重種となっている。この本には掲載されていないものでも、ラン科やユリ科は殆ど、その他にも背丈の低い可憐な花は、園芸用として盗掘の可能性があると考えられる。
 園芸に用いられる山野草が生産品が中心となりつつあるとはいえ、林道等があれば比較的安易に採取が可能であり、法律で殆ど禁止されておらず、あくまでもモラルの範囲でしかないため、自然からの採取・盗掘はなくなりそうにない。特に、貴重種ほど山野草として人気が高い、逆に人気が高いため貴重となることから、貴重種ほど絶滅の危機に瀕することを意味するものと思われる。貴重種を保護するには、種の保存法における国内希少動植物の種類を大幅に拡大する一方、自然からの採取は種の絶滅を招く誤った行為であることを業者やマニアにPRするなど多面的な対策を講じていかなければならないと思われる。当クラブでは、貴重種を中心に山野草を注意深く観察しながら、盗掘や採取から植物を保護する活動を行ってゆきたいと考えている。最後に、添付する資料は、傾向を理解するために活用した一つの目安に過ぎないということを付け加えておく。


主な園芸用の山野草と貴重植物との関係

〈双子葉離弁花類〉

種の保存法 環境省RDB 大阪府RDB 自然公園法
スミレ科 スミレ属 タチツボスミレ
オオバキスミレ
フウロソウ科 フウロソウ属 ハクサンフウロ
チシマフウロ
アサマフウロ
グンナイフウロ
トカチフウロ
ゲンノショウコ
バラ科 ダイコンソウ属 チングルマ
ユキノシタ科 ウメバチソウ属 ウメバチソウ
シラヒゲソウ
ヤクシマウメバチソウ
ユキノシタ属 ダイモンジソウ
ジンジソウ
センダイソウ
エチゼンダイモンジソウ
ミヤマダイモンジソウ
メギ科 イカリソウ属 イカリソウ
トキワイカリソウ
バイカイカリソウ
キバナイカリソウ
タツタソウ属 タツタソウ
ベンケイソウ科 ムラサキベンケイソウ属 ミセバヤ
ケシ科 コマクサ属 コマクサ
クサノオウ属 ヤマブキソウ
セリバヤマブキソウ
ホソバヤマブキソウ
キンポウゲ科 イチリンソウ属 イチリンソウ
セツブンソウ
フクジュソウ
キクザキイチゲ
ニリンソウ
ユキワリイチゲ
アズマイチゲ
シュウメイギク
オキナグサ属 オキナグサ
カラマツソウ属 カラマツソウ
イトハカラマツ
ツクシカラマツ
ヒレフリカラマツ
ナガバカラマツ
タイカカラマツ
レンゲショウマ属 レンゲショウマ
オウレン属 バイカオウレン
キクバオウレン
センニンソウ属 シロバナハンショウヅル
キンポウゲ属 ヒメリュウキンカ
ミスミソウ属 オオミスミソウ
ミスミソウ
ケスハマソウ
スハマソウ
オダマキ属 ミヤマオダマキ
ヤマオダマキ
シラネアオイ科 シラネアオイ属 シラネアオイ
ボタン科 ボタン属 ヤマシャクヤク
ベニバナヤマシャクヤク
ナデシコ科 ナデシコ属 カワラナデシコ
センノウ属 フシグロセンノウ
マンテマ属 ビランジ
タカネビランジ
ツルビランジ
カムイビランジ
スガワラビランジ
ウマノスズクサ科 カンアオイ属 カンアオイ
オナガカンアオイ
コシノカンアオイ
ミチノクサイシン
オトメアオイ
ミヤコアオイ
ツクシアオイ
サカワサイシン
ウスバサイシン
フタバアオイ
センリョウ科 センリョウ属 ヒトリシズカ
フタリシズカ

〈双子葉合弁花類〉

種の保存法 環境省RDB 大阪府RDB 自然公園法
キク科 キク属 イソギク
サツマノギク
ナカガワノギク
ノジギク
キクタニギク
シマカンギク
コハマギク
ハマギク
ウスユキソウ属 ハヤチネウスユキソウ
レブンウスユキソウ
コマウスユキソウ
チシマウスユキソウ
オオヒラウスユキソウ
ホソバヒナウスユキソウ
ヒナウスユキソウ
ミネウスユキソウ
ヤブレガサ属 ヤブレガサ
キキョウ科 ミゾカクシ属 サワギキョウ
ホタルブクロ属 ホタルブクロ
ヤツシロソウ
チシマギキョウ
イワギキョウ
ツリガネニンジン属 イワシャジン
ホウオウシャジン
マツムシソウ科 マツムシソウ属 マツムシソウ
イワタバコ科 イワタバコ属 イワタバコ
ツツジ科 イワヒゲ属 イワヒゲ
ツツジ属 ヒメエゾムラサキツツジ
エゾムラサキツツジ
ヒカゲツツジ
ミヤマキリシマ
タイナゲンカイツツジ
ヤクシマシャクナゲ
ハナシノブ科 ハナシノブ属 ハナシノブ
ミヤマハナシノブ
エゾハナシノブ
カラフトハナシノブ
リンドウ科 リンドウ属 コケリンドウ
フデリンドウ
ハルリンドウ
リンドウ
エゾリンドウ
アサマリンドウ
サクラソウ科 サクラソウ属 サクラソウ
クリンソウ
カッコウソウ
ユキワリコザクラ
イワザクラ
ハクサンコザクラ
コイワザクラ
ミチノクコザクラ
ハマウツボ科 ナンバンギセル属 ナンバンギセル
〈単子葉〉

種の保存法 環境省RDB 大阪府RDB 自然公園法
ラン科 アツモリソウ属 アツモリソウ
クマガイソウ
レブンアツモリソウ
ホテイアツモリソウ
キバナノアツモリソウ
コアツモリソウ
エビネ属 エビネ
ジエビネ
キエビネ
ナツエビネ
ツルラン
オナガエビネ
ヒロハノカラン
ハクサンチドリ属 ウチョウラン
ヒナラン属 イワチドリ
オキナワチドリ
カキラン属 カキラン
シュスラン属 ミヤマウズラ
ベニシュスラン
カモメラン
シュンラン属 シュンラン
クモキリソウ属 スズムシソウ
ユウコクラン
セッコク属 セッコク
トキソウ属 タイリントキソウ
トキソウ
ミズトンボ属 サギソウ
ネジバナ属 ネジバナ
フウラン属 フウラン
アヤメ科 アヤメ属 ヒメシャガ
ユリ科 ネギ属 イトラッキョウ
キイトラッキョウ
ヤマラッキョウ
エンレイソウ属 エンレイソウ
ミヤマエンレイソウ
オオバナノエンレイソウ
カタクリ属 カタクリ
ギボウシ属 イワギボウシ
タチギボウシ
コバギボウシ
ウナズキギボウシ
オトメギボウシ
ヒメギボウシ
バイモ属 コシノコバイモ
カイコバイモ
アワノコバイモ
ミノコバイモ
ホソバナコバイモ
ショウジョウバカマ属 ショウジョウバカマ
シロバナショウジョウバカマ
ツクシショウジョウバカマ
コショウジョウバカマ
シライトソウ属 シライトソウ
ホトトギス属 ホトトギス
ヤマホトトギス
ヤマジノホトトギス
ジョウロホトトギス
キイジョウロホトトギス
サガミジョウロホトトギス
キバナノツキヌキホトトギス
チャボホトトギス
キバナノホトトギス
タカクマホトトギス
タマガワホトトギス
ユリ属 タモトユリ
ジンリョウユリ
ヤマユリ
ヒメサユリ
コオニユリ
ワスレグサ属 ノカンゾウ
チゴユリ属 チゴユリ
キバナチゴユリ
ホウチャクソウ
サトイモ科 テンナンショウ属 ユキモチソウ
ウラシマソウ
マムシグサ
カヤツリグサ科 ワタスゲ属 ワタスゲ
ヒメワタスゲ
ヌカスゲ

注)種は「NHK趣味の園芸 新園芸相談F山野草」日本放送出版協会〈編〉に掲載されているもの
  種の保存法;絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律
  環境省RDB;植物版レッドリスト(97.08.28 環境庁)
  大阪府RDB;大阪府における保護上重要な野生生物−大阪府レッドデータブック−(2000.3 大阪府)
  自然公園法;金剛生駒紀泉国定公園における自然公園法第17条第3項第8号の規定により環境庁長官が指定する植物
  ●;該当、−;非該当、空欄;標本地なし、但し、環境省RDBの●は記入漏れの可能性あり

(上田泰二郎)


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