09.05.08
■サトイモ科テンナンショウ属

 地下には偏球形の地下茎。1年生の地上部は、数枚の鞘状葉と1〜2個の普通葉からなる。葉身は鳥足状・掌状・輪状の複葉。葉柄の基部は、花柄を両側から抱き、茎のように見える葉鞘(偽茎)となる。

 仏炎苞は1枚で、花序を包み、上部は花序を覆う。ふつう雌雄異株、栄養状態によって雌雄が決まることから、雌雄偽異株という。

 花も花序も単性で、花軸の下部に集まる。根生葉と互生の茎葉、葉身は網状脈が多い。花軸の先は棒状で付属体と呼ぶ。雄花は2〜数個の雄しべが合着、雌花は雌しべだけで、花被片はない。子房は1室、1〜多数の直生胚珠。

 果実は液果で、卵球形、熟して朱赤色、少数の種子。種子はほぼ球形で乳白色。

 世界に150種、湿潤な暖帯〜温帯に多い。日本産は新しい種の場合、変異が多く、分類が困難と言われている。

●ムロウテンナンショウとコウライテンナンショウ

 ムロウテンナンショウは付属体が緑色で細い曲がったマッチ棒だが、コウライテンナンショウは付属体が白くて太い棍棒状である。

 ふつう雄株は小さく、雌株は大きい。ムロウテンナンショウの方がコウライテンナンショウより開花は早い。

 なお、コウライテンナンショウは幅広く含めて、マムシグサとする説もある。

○付属体が緑のマッチ棒─仏炎苞の舷部が短い─小葉の幅が狭い→ムロウテンナンショウ

○付属体が白い棍棒  ─仏炎苞の舷部が長い─小葉の幅が広い→コウライテンナンショウ

●ムロウテンナンショウ(室生天南星)

●コウライテンナンショウ(高麗天南星)

名の謂われ

奈良県の室生で発見されたことから、天南星は漢名

昔の朝鮮半島の国の名

生 育

山地の林中

平地から山地の野原、林縁、林下など

分 布

愛知県、福井県、近畿地方

北海道〜近畿地方

全 体

第一葉が第二葉よりはるかに大きい、偽茎・葉柄の色が緑を帯びた茶褐色

第一葉が第二葉よりはるかに大きい、偽茎・葉柄の色が薄い緑色

花 序

付属体の見える部分は細く長く少し前に曲がり、先が緑色、仏炎苞の舷部が短い

付属体の見える部分は短く太く、全部が白色、仏炎苞の舷部が長く突き出る

雄 花

黒褐色の点は雄しべの葯、雄しべは疎ら、花軸は半透明の乳白色、付属体の柄は長い

黒褐色の点は雄しべの葯、雄しべは密、花軸は白色、付属体の柄は短い

雌 花

 

雌しべがトウモロコシ状に密生、付属体の柄に褐色の斑

雌しべがトウモロコシ状に密生(突起が柱頭、球状が子房)

舷部の裏

乳状突起が密生し、白色を帯びる

光沢がある

複 葉

鳥足状複葉、小葉の幅は細目

鳥足状複葉、小葉の幅は広目


注)山と渓谷社「野に咲く花」、「山に咲く花」などを参考としている。


(文・画像;上 田)

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